スポンサーリンク

最近、自分の活動について思案していたところ「北欧の教育」というところに強い興味が出てきていました。

現在、日本の教育も「21世紀型教育」とでもいうような従来とは異なった考え方、「北欧型」にシフトしていっています(2020年には小学校の学習指導要領が大きく改定予定)。

では、そんな次世代の教育の解答とも言えそうな「北欧の教育」とは実際のところどうなのでしょうか?

じつは私たちは北欧について本やネット等で知っていること以外に、もっと重要な事柄を理解していないのでは?

そう思い、今回デンマークで保育や教育に携わっている日本人女性3人組「mormormor」さんにお話を聞いてきました。

【mormormorさんのプロフィール】

"mor(モア)"とは、デンマーク語で"お母さん"のこと。 "mormormor(モアモアモア)"は、しあわせな国デンマークの教育現場で働く"mor"、 日本人お母さん3人のユニットです。

デンマーク到着、初日はデンマークの保育園で保育士をされているムンクイエンセン宮腰花絵(みやこし はなえ)さんのご自宅にてお話を伺いました。

ムンクイエンセン宮腰花絵(みやこし はなえ)さん

伝統とモダンが融合された美しい街、コペンハーゲン市にある公立保育園に勤務。同園はイタリアのレッジョエミリア教育にインスピレーションを受け、子供たちそれぞれの個性や意思に寄り添い、学びへの探求を尊重した保育を実践している。
また、描画を中心とした造形表現活動にも積極的に取り組んでいる。現在8か月から2歳半までの14人のクラス担任。
寝ても覚めてもコロコロコミックな10歳とダンスに夢中な5歳の息子たち、特技が料理と整理整頓な夫との4人暮らし。たまの息抜き方法は夫婦でカフェ巡り。埼玉県所沢市出身。

スポンサーリンク

デンマークの保育園事情

ーーー 今回、私が一番お聞きしたかったのはレッジョ・エミリアについてです。はなえさんの園ではレッジョ・エミリアの実践をされているんですよね?

はなえさん:はい、私達の園はレッジョ・エミリアのインスピレーションを受けて実践をしている園です。公立の園なのですが、現園長と主任、副主任が立ち上げのときにレッジョ・エミリアを行っていくことを始め、市に認められ今に至ります。

ーーー デンマークの園は、どこもレッジョ・エミリアを実践しているのですか?

はなえさん:いえ、そういうわけではありません。私達の市だと2〜3つの園ですね。コペンハーゲン市だともっと多いかもしれません。

ーーー 主流、というわけではない?

はなえさん:ないですね!恐らく知らない人の方が多いかもしれないです。保護者も(レッジョ・エミリアを)知ってて子どもを園に入れてるかというと、そうでもなかったりします。イタリア人の保護者もいるのですが、レッジョ・エミリアを知らなかったようです。

ーーー (笑) ということはイタリア本国でさえも、認知されているわけではないのですね。

はなえさん:レッジョ・エミリア市以外の出身の人なんかだと、認知度は低い印象ですね。

ーーー レッジョ・エミリアの理念である「子どもの自主性を大切にする」というのは実際どのような活動になるのでしょうか?子ども達が「やってみたく」なるように仕向けていく、というか。

はなえさん:そう、子ども達の扉を開けていってあげなければいけない!例えばこの写真の子(スライドに映る2歳の子)はある時シナモンの匂いを嗅いでいて、「いいにおい?」と聞いたら「クリスマスのにおいがする!(デンマークではクリスマスの時期にスパイスを入れたホットワインがある)」と答えました。そこから、【クリスマスの匂いの絵を描いてみようか?】というように子どもから出た表現から活動を始めたり広げたりしていきます。

ーーー その活動というのは、その子「個人」に行っているのですよね?

はなえさん:私達の園は小さい園なので、そこまで人数がいないのですが、例えば13人いたら年齢別で4人位のグループにわけます。ペタゴー(保育士)はそのグループの子一人ひとりに対応していくことになります。その子一人から生まれた活動をグループで行うこともあれば、そうでもなかったり。外に遊びに行きたいという子は、その時間だけ別グループに移ったりもします。

ーーー グループ単位での活動がメインではあるけど、その子がやりたいことをしていけるようフレキシブルに対応している、ということですね。

日本とデンマークの保育観の違いはある?


ーーー 保護者との関係はどうですか?というのも、日本ってどちらかというと保育園は「サービス業」のようなイメージがあると思うんです。それなので、子どもを預けている保護者は「お客さま」として対応しなければいけないような感じがあります。

はなえさん:そうですね、私もつい「サービス業」のように、というか「(保護者に)よく見せなければいけない」とか考えてしまいがちだけど、わりと対等だったりします。

はなえさん:親の意識としては、「子どもが毎日楽しければ十分」といった感じでしょうか。もちろん、それはこちら側がきちんと園で行っていることをしっかりドキュメンテーション(後述)などで伝えていってるから、親も「ちゃんと見てくれている」と信頼してくれているのだと思います。

ーーー では、「危険」への意識はどうですか?というのも、私の実体験(保育士として)からなのですが、サービス業である感覚が故にどうしても子どもに「怪我をさせないように!」過敏になってしまう気がするのです。つまり何が言いたいかというと、一言目には「あぶない!」と言って子どもをとりあえず制止させるということがあるのですが、

はなえさん:そうなんです!

ーーー そのあたりはデンマークだとどうですか?

はなえさん:もちろん、やってはいけないことや本当に危ないことに対しては言います。でも、私もやっぱりそういう日本人的なところがあります。

はなえさん:こういうことがありました。ある時、キッチンの遊具を買ったんです。それは、お鍋をかけられたり、オーブンがあるようなものです。で、その遊具の角がちょうどハイハイから立ち上がった頭の位置にあるんです。なので、私は角にガードを付けたんです。

ーーー よく百均とかでも売っている、角部分をスポンジ状のもので覆うやつですね。

はなえさん:はい。でも、他の先生は「つけるな」と。あと、オーブン部分が引き戸のようになっているのですが、買った一日目に指をはさんだ子がいたんです。そこで戸が全部閉まりきらないように物をかませたのですが、「そんなことどうしてするんだ?」と。

ーーー 日本だったら当たり前のことなのに!

はなえさん:でも、それは「そんなことをして子どもはいつ学ぶんだ?」ということなんです。

ーーー たしかに、何でも止めてしまっては子どもの「学び」の機会を奪っている、とも言えますよね。それはレッジョ・エミリアうんぬんではなく、デンマーク人の気質なのですかね?

はなえさん:うーん、そうかもしれないです。園の中でケガはもちろんあります、それでも大したケガはないんです。親も「どうしたんですか!?」となったりしますが、わりとおおらかです。同僚なんかも「それは転んだのよ」とそのままを話します。日本みたいに「すみませんちゃんと見ていなくて…」とはならないですね。

子どもへの声のかけかたの違い

※1〜2歳のグループ。カタツムリがテーマの活動中スライドを見る。実物を紙の上にのせて描いている子も!

ーーー  紙の上にカタツムリを直のせで描いてますね(笑)自分だったら「やめなさい!」と止めてしまいそう。

はなえさん:食べようとする子もいたので危険だったんだけど(笑)

ーーー でも、こういうのも先生の視点がまず違うのでしょうね。「やめて!」の前に子どもがやろうとしていることをちゃんと見ている。こっちが思っていることを「やらせようと」しているわけではない。

はなえさん:そうです。「あっ!!」とは思うんだけど、その気持は堪えるんです!そこで否定的な言葉を発すると子どもはすごい敏感に察知する。で、もう描かなくなったり。だから、こちらがして欲しくないことをした時の言葉のかけ方にはとても気を配っています。

ーーー そういうのって例えばはなえさんが日本人だから、とかはありますかね?もし、デンマーク人だったら同じ場面でも言葉のかけ方に違いがあったりとか。

はなえさん:カタツムリを口に入れちゃうとかはもちろん注意するけど、「ダメだよ」とかは言わないかもしれませんね。こう、サッとさりげなく止めるとか。

はなえさん:あと、日本だと「すごいね〜!」とか「じょうず〜!」って褒めたりするじゃない?でもデンマーク人って、そういうことはあまり言わない。例えば、4人いる中で一人の子を「上手だね!」と褒めたとする。そうすると、周りの子達は「じゃあ私は上手ではない」と傷つく子もいるかもしれない、競争心や闘争心が生まれる子もいるかもしれない。そういう他人との図式が成り立つようなことは避けているんです。

ーーー というのは、まったく「褒めない」というわけではないのですよね?例えばそのグループだったら、全体を考慮した上で競わせないように声掛けをしているとか。

はなえさん:そうそう。競わせることでやる気や自信をつけさせるということは、ある子には合うかもしれないけどある子には合わないかもしれない。という考え方ですね。なので、デンマークでは「ヨーイドン」とか「通知書」とかはないんです。

はなえさん:もちろん個人を褒めることもありますよ。子どもの描いた絵を見て「この丸い形がかけてるね、カタツムリに似ているね」とか。

ーーー 手放しで称賛するのではなく、事実を認める、といったことでしょうかね。

はなえさん:「ヤンテローの法則」ってご存知ですか?それは「自分は人よりできると思ってはいけない」とか。それがデンマーク人の基質になっているって言われてます。

ドキュメンテーションは大人も子どももみんなで共有するためにある!


ーーー (スライドを見ながら)子ども達が絵を描いたり遊んだりしている写真がたくさんありますが、こういう写真や動画などをまとめて可視化するドキュメンテーションというのは日常的に記録をしていくものなんですよね?

はなえさん:はい、毎日おこなっています。

ーーー ドキュメンテーションというものは単に記録ではなく、それ自体をもって保護者に見てもらったり、何より子ども達と「こういうことやったよね」というようにフィードバックさせていったりすることを指すのですよね?

はなえさん:そうそう、例えば壁に張り出したりして。それを子ども達と見た時に、例えば足と手に絵の具を塗る活動をした後に子どもが「今度は顔もやりたいね」とか発言したら、ペタゴー(保育士)はそれを拾って、「じゃあ次は顔でどんなことをする?」と一緒に展開させていったり。

ーーー ドキュメンテーションそのものはいつ作るのですか?

はなえさん:私たちには事務所でドキュメンテーションを作る作業をしていい時間が設けられています。その時に作っています。

ーーー ちなみに毎日の個人個人の様子はどのように保護者へ伝えているのでしょうか?

はなえさん:日本みたいに連絡帳みたいなものはなくて、そのかわりITを利用している形です。例えば、支給されているiPadは保護者とオンラインで繋がっていて今日の様子や写真などをポンッと送信できるようになっています。保護者の方も欠席の連絡などオンラインで済ませられるなど合理的なシステムになっていますね。

ーーー 日本だと連絡帳や日誌など書類業務が多くて残業や持ち帰り仕事になることが多いです。他にも行事準備や装飾とか…

はなえさん:デンマークの園は連絡帳が無かったり行事も少なかったりしますが、じゃあ日本と比べて仕事量が少ないかというと、そうでもありません。ドキュメンテーションもありますしね。ちなみに残業するなんてことはないです。というより絶対にしません!(笑)

ーーー 強い意思を感じます(笑)

はなえさん:なので、残業をするのではなく、時間内で終わらせられるように工夫や協力が大切です。

☆デンマークの教育、保育が目指しているところ

ーーー 日本の園だと「保育所保育指針」や「幼稚園教育要領」など国が定めたものに沿って全体の保育や教育がなされています。デンマークではこういったものはあるのでしょうか?

はなえさん:もちろんデンマークにも指導要領はあります。例えば日本でいう「5領域」みたいなのはデンマークだと6つあります。

  • 子どもの全面的な人間形成・個の確立
  • 言葉
  • 体と動き
  • 自然と自然の現象
  • 文化的表現方法と価値
  • 人間関係・社会能力

これら6つのテーマを基に学びの計画を立てていきます。

ーーー 週案や月案といった活動予定はあるのですか?

はなえさん:私の園では、週一回絵を描く、絵本を読む、リトミック、散歩、感覚遊び、といった形で予定を立ててあります。これらを6つのテーマに当てはめて活動をざっくり考えていきます。もちろん、それらは子ども達の様子や興味から柔軟に対応させていくことになります。

ーーー なるほど、この6つのテーマが「子どもが身につけておくべき内容」ということになるのですね。

はなえさん:そう、でも実はそれはすごく最近の話なのです。以前から指針だったり方針だったりは各自治体や園などでそれぞれ取り組みがありましたが、2004年以降「年間保育指導目的および計画書」の作成、提出が統一化されました。また、伝統的にも保育園、幼稚園は「遊び」を中心に活動することを重要視するため、読み書き習得をなど、教育を受ける場所ではないとしています。基本的に対話によるしつけを重んじて, 自立 、自制心を育てるように子どもたちと関わっています。

ーーー 何か特徴的な取り組みはなされているのでしょうか?

はなえさん:例えば、自治体から保育士各自にiPadが支給されています。それを利用して専用のアプリケーションに子ども達との活動の記録をつけていきます。すると、こちらの取り組みによって子ども達が得られたであろうスキルのグラフが表示され、次回以降の活動の参考にしたりしています。

ーーー デンマークの保育や教育では、学力という点での意識はされているのでしょうか?

はなえさん:それはもちろんあります。でも学力と言っても日本で言う学力ではなく、

ーーー 国語算数理科社会とかではなく?

はなえさん:そう、もっとこう社会性とか、「個人」が目に見えるカタチですね。

ーーー 日本からすると、北欧の教育や保育は「すごい!」と紋切り型に思われがちですが、その国にはその国の問題があってそれに対して取り組んでいる。となると、どこが一番すごい、正しいなんてものはなく、みんな頑張っているんですよね。

はなえさん:自分の息子が通っている園と働いている園しか知らないので「デンマークの園は」なんて言えないけど、私もそう思います。

ーーー でも、そういったことも実際に「外を知る」というキッカケがないとわからない部分ですよね。自分だけが大変というわけではないし、実はよそに改善のヒントがあったり。

はなえさん:そうそう!そういうキッカケをつくることをしたくてmormormorも始めました。

ーーー 世界の教育保育系キッカケづくりのデンマーク代表ですね!

はなえさん:(笑)私は、見聞きする日本の保育士さんの大変な状況とかを変えられたら…と思います。それは、デンマークが優れてるとか「素晴らしいんですよ!」といったことではなく「こういうのもあるよ」って1つの考え方を伝えることです。

世界一しあわせな国の教育のおはなし  ~デンマーク人はなぜ世界一しあわせ?ランキングではわからない、しあわせの指標~

mormormorさんのトークイベントが7月にあるようです。おすすめです!

・イベントページ

・Twitter

・Facebook

スポンサーリンク

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

おすすめの記事