11月11日から五日間、ドイツの音楽療法を実際に学んできました。四日目はタクシーに乗りミュンスター大学へ。

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大学の先生直々に講義をしてくれる事になっており、非常に貴重な時間となるのは

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この専用の部屋に入った瞬間に感じられました。

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部屋は広すぎず、それでいて楽器は十分にある、音楽療法向けの部屋です。
ここで、まず先生の音楽療法、アプローチ、症例からの説明を受けました。

 

その後、全員で自由に即興演奏を行いました。四人1グループになり、1グループずつ行う。最終的には全員での即興演奏に、という流れです。

 

自分の番が回ってくるまで、ドクターのピアノ演奏に食い入るよう耳を向けてみました。
音はとてもシンプルです。それなので、「何をしているのか」が明確です。

 

 

小さい箱に弦が数本張ってある楽器(名前は失念)を鳴らしている人がいました。音階は有りませんが、チューニングからしてアラビックな感じです。

 

それまで同じ空間に浮遊していたかのようなピアノの音はゆっくりと、その弦楽器に近づいていくように聴こえました。近しい音で寄り添うそうに演奏されたあと、ジプシー音階のような音使いで規則性のある伴奏のようになってきました(この時点でも両手合わせて2音ほどしか使っていません)。

 

すると、それに呼応するように全体の形が纏まり始めたように聴こえました。他の楽器が打楽器系なこともあり、リズム(とはいえカッチリした拍感ではなく)が目立ってきて、あたかも共通の話題が見つかって会話が弾んできたかのようです。

 

自分の番でも同様に会話のようなイメージが持てました(音楽のイメージではジプシー音楽を想起)。自分が高音でリズミカルに鳴らすと、それをモチーフとして応えるようにピアノから聴こえてきた時は、「共有している」という実感が特に感じられました。

 

短い時間でしたが、全員での即興演奏体験となりました。その後は食堂で昼食。

 

 

午後からは、ミュンスターにある病院の見学です。

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ここの精神病棟でも、先日のハンブルグの病院と同様に、作業療法、運動療法、芸術療法と心理療法が中心とされているようです。

音楽療法の部屋に案内していただきました。やはりここにも楽器がたくさんあります。

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ここでは、即興演奏の実技中心にお話が進められました。

 

 

最初に、二人が選ばれ、二人の演奏を他の人が目を閉じて聞きます。この時、演奏担当に渡された楽器は、「本人が弾いたことのない楽器」です。

 

トランペットとギター。二人の音は、もちろんのこと不馴れな音です。まどろっこしさを正直感じましたが、それでもお互いがコンタクトを取ろうとしているのが感じられます。

 

そして演奏が終わった後、簡単にディスカッションをしましたが、演奏技術については触れられず、「その音を鳴らしている人」を軸に話が展開しました。

 

この出来事は、演奏者にとっても聴衆者にとっても「期待していた音が出なかった」ということで、新しい経験だったよね、と先生は話を続けます。

 

 

音楽療法において、「音楽」が重要なのではなく「その人」が重要になる。

 

 

即興演奏を行い、その人が何を考え何を感じているか?様々な感情や思考が見え隠れしていることをどんな風に見ていくか?

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その後もいくつかのワークが行なわれ、その都度ディスカッションしていきましたが、それらについてワークとしてのルール説明はあるものの、その意味については先生の口からは触れられませんでした。

 

そして、終わりの時間に差し掛かった頃、こういった事が説明されました。

 

クライエントとのセッションは、何も言わず始め、その人がどこまで出来るかを見ている。弾いても弾かなくてもどちらでもよいですよ、と促し、その人がどんな楽器に向かうかを見ていく。

 

いきなり楽器を弾かせる形になると「上手く弾かなければ」などと不安が出てくる人もいます(ドイツ人はその傾向が多いけど日本人はそうでないのね、との感想がありました)。また、不安が大きい人は小さい楽器を選んだり、小さい音楽表現だったりするそうです。そうした最初の一歩がセラピーを進める上での判断材料になるのでしょう。

 

「いきなり」でセラピーを進めるのではなく、クライエントの不安を見ていきながら信頼関係を重ねていく。即興演奏のセッションは、そうした繊細で地道なやりとりを繰返してこそ発展していき、やがてクライエントの心を導いていくのでしょう。

 

 

「勇気を持って色々な事を試してくれて、ありがとう」と私たちに向けた先生の言葉で、この日の体験は終了しました。

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