11月11日から五日間、ドイツの音楽療法を実際に学んできました。

その人に対する音楽は、何を意味するか?

昏睡状態にある患者への音楽療法の関わり方は、「今はあなたの時間」と決して行動を強制するものではなく、患者の意思に沿う形で行われる。そして、それは患者の状態や様子に合わせて行われる。

 

この説明を聞いた時に日本の音楽療法を思い出しました。日本でも同様に、自発的に関わっていくことが難しい患者への音楽療法がある、といった講義を受けた事があります。それは、患者の様子、状態に「合わせて」音楽を行う、というものでした。関わり方としては、似ています。ただ、決定的にアプローチが異なるようです。

 

日本式のアプローチは「歌」を使います(もちろん、それだけではないのでしょうが、少なくとも自分が受けた協会公式の講義では、そういった説明がなされていました)。その歌は、童謡や歌謡曲、その患者に馴染みのあるであろう選曲が中心です。

 

それを思い出し、質疑応答の時間に「既成の曲をつかうことがあるのか?」という質問を、その音楽療法士にしてみました、答えは「使わない」とのことです。正確には、試したこともあるが、今は使わない、とのことでした。

 

 

お話の中で、こういった事例がありました。
ある患者は、昔ギターが好きだったそうです。そこで、セラピーの中でギターを使用してみたところ、患者の反応はお話の思わしくなくなっていった、とのことです。

 

人にもよるのでしょうが、自分がまだ「今の状態」ではない頃を思い出して、そして現状を自覚することで拒否反応を示すことがあるそうです。患者の家族が、個人の昔好きだったもの、音楽CDなどを提供してくれる事もあるようですが、あくまで「その人の背景」を知るための材料として活用するそうです。それなので、その患者にとって「思い出」がある事柄は慎重になる必要があるようです。

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実際に昏睡状態の患者に対してのセラピーの様子を見せて頂きました。患者はベット状の楽器(初日にも見たもの)に横になり、セラピストはゆっくり患者に声や音で関わっていきます。

 

ベット背面の弦を鳴らし始めました。いびき(実際には喉のカテーテルからの呼吸音?)をかいていた患者の様子が次第に変わります。口元をモゴモゴさせたり、足の親指側を動かしたり、お腹も大きく動いています。その間、セラピストは患者の様子を注意深く見ながら、音を演奏します。

 

先ほどのお話の中で印象的だったのは、「楽器は中立的」という言葉です。患者と関わるために、音を鳴らしたり、響きを直接手足に感じさせたりします。その時楽器は「伴奏のため」「特定の音を出すため」「その動作のため」と決まりきっておらず、全て対話のために使われます。

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コミュニケーションを促すために台本を用意してやり取りをすると、自然でしょうか?ぎこちなさの無いやり取りは、筋書きが無く「その瞬間」の気持ちから自然に生まれてくるものだと思います。それこそ「即興」なのでしょう。

 

高齢者施設での見学

午後は高齢者施設での見学、ドイツ滞在中では最後の施設訪問です。

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ここでの音楽療法士は、若い女性の方。施設に勤務しているのではなく、訪問するスタイルだそうです。しかも、そうした「音楽療法士の派遣」といったスタイルの会社を立ち上げ、彼女のメソッドを取り入れ看板を掲げる、要はフランチャイズの形を進め、ドイツ全土で彼女のスタイルで音楽療法が成されているそうです。

 

http://www.musikaufraedern.de

 

施設に入る直前、内容の説明を受けました。今回は、20人前後の利用者に、歌本を元に昔の歌を中心に歌う活動を行う、とのことでした。「それって、日本でスタンダードな歌唱療法、といわれているアレでは…?」と疑問が頭をかすめた次の瞬間、その療法士は言いました。

 

「それなので、療法にはならないので、今回のは音楽療法ではありません」
後の質問で、ではここでの音楽療法はどんなものなるのか?という、日本の音楽療法慣れ親しんだ人なら誰でも思い浮かべる事柄については、「6人位で行われるもので〜」と、やはり前述の通り心理療法です。

 

施設の一階の、ラウンジのような場所で行われました。元々ある椅子がピアノの方を向くように向けられ(活動が始まる、といった強制的な列や配置ではなく)続々と利用者が集まってきます。

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活動の流れは、歌本を中心にリクエストを受け付けていく方法でした。セラピストは二人、中心のセラピストはピアノかアコーディオンを、もう一人はギターを使って伴奏します。積極的にリクエストする人、歌本を見ないで歌い上げる人、小さい素振りで指揮をして参加する人、友達と談笑する人、聴き入る人、様々です。

 

実は、前日に「日本の歌を一曲歌って欲しい」とのリクエストを受けていました。冒頭でいきなり呼ばれ、全員で「上を向いて歩こう」を歌いました(私は持参したアコーディナで伴奏、ようやっとコレが役に立った!)。

 

途中、休憩を挟みつつ、全部で10曲ほど歌いました。最後に終わりの歌として毎回歌われている(であろう)アメージンググレイスの、言わば「替え歌(内容は把握していません)」を歌い活動は終了。

 

この日の夜は、前日にお世話になった(この日も同行されていましたが)テュプカ先生夫妻と街中で食事。そういえば、翌日は帰国の日。ああいとおしや。

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