親子リトミックで「あると便利なもの」
最後は「道具」編です。自身の経験から有用だったものを取り上げていきます。
活動で使用するもの
リトミックは、「身体で音楽する」ようなもので、極端に言えば身一つで活動できます。
とはいえ、出来る事が限られる乳幼児では、そうも言ってられません。
何より集中出来る時間が短いので、例えば「即時反応」といった目的ひとつでも、様々なアプローチが必要です。
そして、子どもにとって興味のある活動にするためには、それが「遊び」になる事が条件です。
そのために、「道具」がとても有効になってきます。
☆手作りマラカス
握る、振るといった動作が出来ます。
そんな当たり前の事ですが、活動においては有効に使えます。
音楽と一緒に鳴らす〜止める、といったリトミックの基本である「即時反応」を手軽に遊びへ取り入れる事ができます。
この楽器が優れているのは「誰でも鳴らせる」といった部分です。
赤ちゃんでも握る事が出来れば感覚的に楽しめます。
安価で大量に作れる(材料があれば、ですが)この楽器は常にカバンに忍ばせておきたいものです。
作り方は以下を参照して下さい。
☆たいこ
「たいこ」も有効な楽器です。
なぜなら、マラカスと同様に技術が必要ではない楽器だからです。
こちらが歌に合わせて差し出したり…または、親子一組ずつで親が手に持って子どもと鳴らすといった活動だと一つのたいこで間に合います。
以下の物が安価ながら良い鳴りがするのでオススメです。
また、たいこを手で鳴らすのも良いですが、スティックのような物を使うと活動に幅が生まれます。
レモ フレームドラム 12″ (30cm) HD-8512-00
こういった小物を使うという事は、「どうぞ」「ありがとう」といったやり取りが生まれます。
そこから、指導者と子どもとの接点を作り、お互いの関係を作るキッカケにもなり得ます。
また、幼児では配られるスティックを「期待して待つ」や「順番を意識する」などの目的を持つ事もできます。
☆キーボード
マストアイテムであろうピアノですが、もちろん持ち運ぶわけにはいきません。
現場にピアノが置いてあり使用可能なら問題ないのですが、そうそう恵まれた環境でないとそうはいきません。
では、現場にあるキーボードを使用すればよい、となります。
とはいえ、活動に耐えうる機能が揃っているものがあるとは限りません(経験上、児童館に置いてあるキーボードは強弱が付けられず、小音量のいわゆる「安い」ものが多いです)。
それなので、自前で用意する必要が出てきます。個人的に、この用途で求められるものは、
•61鍵以上
•強弱が付けられる
•軽い、コンパクト
•安い(個人差あり)
だと思っています。
それらを満たすものでは、こちらのキーボードがオススメです。
こちらは、上記の下位機種となり、さらにコンパクトで持ち運びがしやすいです。ただし鍵盤数が61鍵で音量も控えめなので、大人数での活動には向きません。自分の経験だと親子10組が限界です。
簡易なものですが、サステインペダルとしてこれが使用できます。かさばらず持ち運べます。
そして、オススメなのが「アコーディオン」です。
(写真はボタンアコーディオン)
アコーディオンの特徴として、以下が挙げられます、
•アコースティック楽器(電子楽器でもあるが)
•オーケストレーションが可能
•単体で音量も十分
•持ち運べる
これらの特徴は、児童館リトミックにピッタリです。自分も少しずつ活用し始めています。
アコーディオンの特徴や活用方法など、いずれご紹介したいと思います(まだ、そこまで使いこなせていないので…)。以下のページで仕組みについて載っています。
以上、児童館リトミックで活動するためのポイント「道具」編でした。
さいごに
もちろん、人それぞれスタイルや方法があるので、使用するものは異なってきます。
それなので、ご自身で進めていきその中から必要な物を揃えていく事が大切だと思います。
ここで紹介したものは、あくまで「私が」有用としているものです。参考にしていただければ幸いです。
また、ここでの方法は、あくまで一つの例にしか過ぎません。
自分のやりたいこと、現場で求められること、利用者の反応などなど、色々な要素を反映させていくべきです。
悩んだ先には、必ず答えが見つかります。
児童館で親子リトミックをするための、三つのポイント part2
どうすれば親子リトミックがうまくいく?
児童館で親子リトミックを行うための心得。
とすると偉そうですが、要は知っておくと進める事が楽になるポイントを、自身の経験からお話します。
児童館と「教室」の違い
ここで言う「教室」とは、ヤ○ハやカ○イ等といった音楽教室の事を指します。
これらで行われているリトミックと児童館のリトミックでは何が違うのか?
それは、参加者側からする「有料」と「無料」の違いです。
それによって参加者の意識が変わってきます。
かんたんに言ってしまえば、お金を払う必要のある「教室」には内容がどうであれ【それを目的に来る】ということ。
無料である児童館には、その限りではない、ということです。
有料である「教室」は、予め内容について同意し契約を交わし行われるのに対し、無料である児童館のものは、それらの行程がありません。
そうすると、参加者によっては「こんなのやるつもりではなかったのに…(やりたくないな…)」といった思いをするかもしれないのです。
もし、ニーズがあまりない参加者が多数となった場合は「やらされてる感」が広がり、活動全体が盛り上がらなくなる恐れがあります。
そうなると、今後の活動自体の存続が怪しくなってきてしまいます(誰も来なくなる→児童館側からNGをもらってしまう)。
もちろん、児童館でのリトミックを楽しみにして参加される方が大半だと感じています(そして、そういった方々に支えられて活動できています)。
それでも、そうでない方もいない訳ではありません。
それなので、活動内容に初めての人でも入りやすいような工夫を毎回、意識していく必要があります。
活動内容について
具体的な方法については、人それぞれだと思います。ここでは、中身ではなく器の部分をお話します。
・体力と集中の持続時間
リトミックは主に身体を動かす活動になります。
それなので、親子で歩いたり、走ったりと様々な動きをしていく事になります。
しかし、間に休憩を挟みつつとはいえ、こういった内容を30分間続けることは大変です。もちろん参加者が、です。
活動に対する体力と集中(興味)が最もあるのは、開始直後です。
活動を続けていくと、体力・集中は少なくなっていきます。
それなので、動きなど「疲れる」活動は前半のみに設定するようにします。
30分の活動なら、導入5分→動き活動10分→その他活動10〜15分くらいが丁度良いでしょう。
・声かけ、モデル提示
活動に参加したものの、どうやればいいのか?何回も参加しているなら見通しが持てますが、初参加の場合はわかりません。
全員が経験者だとしても、全員が積極的に動けるわけではありません。
それなので、何をするのかを参加者に明確な提示をしていかなければなりません。
一番分かりやすいのは、実際に「動いて見せる」ことです。
これにより大人は「ああやるのね」と理解し、子どもは(年齢によりますが)模倣することが出来ます。
毎回こちらが動いて見せる、といった流れを入れると活動のテンポが悪くなるので(演奏者とリーダーまたはアシスタント、といったダルクローズでは珍しい複数人のスタイルで行う場合、話は別ですが)、演奏しながら「声かけ」をすることも有効です。
この場合、長々と説明するのではなく、短くスパッと説明しましょう。
この二つの使い分けですが、「どこの部分が伝えるのが難しいか?」といった基準で臨機応変に対応していけば良いでしょう。
そして、原則として「声かけ」は大人のため、「動いて見せる」は子どものため、という事があります。
子どもは大人ほど言葉が分からないからです。
活動のペース配分が忙しいものではなく、分かりやすい説明と進行が盛り込まれた活動内容だと、初めての人でも取っ付きやすくなります。
そして「また来てみようかな」と思ってもらえれば次回につながっていきます。
過剰なサービスはいりません。
内容にちょっとした配慮をすることが、児童館での親子リトミックを行うコツだと思います。
次回は、どんな物が役に立つのか?楽器や機材などを紹介します。
[cc id=3452]
児童館で親子リトミックをするための、三つのポイント part1
児童館でのリトミックの仕組み
最初に児童館での活動の全体的な部分をお話します。
もちろん、これは私の経験上のことであり、一般的なものではないかもしれません。
いつ行われているのか?
各児童館によって定期的な親子向けプログラムが行われています。
例えば、0歳児向けは火曜日、1.2歳児向けは木曜日といった感じで対象別に時間、曜日が組まれています。
ほとんどの場合、リトミックはここの時間で活動を行われます。
リトミック講師は「ゲスト講師」といった形で、この親子向けプログラムの時間を受け持つ事になります。
活動時間は児童館側のニーズによって変化します。
例えば通常行われているプログラムの一部分でリトミックを担当したとして20分ほど、リトミックのみのイベント的なもので40~60分といったところです。
活動頻度ですが、お金が関わってくる事で変わってきます。
どこの児童館さんも少ない予算でやりくりしているのが伺えるので(福祉全体に言えますが)、講師謝礼が発生するとなると2~3ヶ月に一度くらいになります。
ボランティアで結構!というのであれば、月一回以上などもっと頻度は多くお願いできるかもしれません。
もっとも、児童館側に受け入れられたら、つまり腕が認めてもらえれば!?ですが。
どんな場所で行うか?
遊戯室やホールとよばれる広いスペースが、各児童館に一つはあります。
そこで行う事が多いです。地域によりますが、人数が多く集まるので、必然的に一番広い部屋を使う事になります。
体育館を想像してもらえば、おおよそのイメージはつくかと思います。
床は板張りが多く、素足になって活動できます。
0歳児対象の時間ではゴザやカーペットを敷いたりします。
基本的に固定遊具は無く(ろくぼく、はあったりしますが乳児は興味をそんなに持ちません。ただし、小学生対象の場合は殆どの子は興奮して登り下りする事に夢中になるので、活動の妨げになり得ます)、ノビノビと動けるスペースになっています。
バギーのような稼動遊具が出されていたりしますが、活動中は職員の方に片付けをお願いしたりします。
児童館に楽器はあるのか?
これまた児童館によります。
タンバリンやカスタネット、トライアングルといった教育にも使われている楽器はある程度の数が置いてあったりします。
ただし、そこまで多い数は確保されていない場合が殆どですので、事前に調べておく必要があります。
そして、殆どのリトミック講師が望むであろうアコースティックピアノですが、音楽室に設置されている事が殆どなので、ホールで使用するのは難しいでしょう(参加人数とピアノが置いてある部屋の広さによっては融通がきくかもしれませんが…)。
それなので、キーボードを使用することになります。
キーボードのグレードも様々です。
ある程度の強弱が付けられない、など児童館のものが希望に叶わないものである場合は、自身で持ち込むことを検討しなければなりません。
楽器問題は、一つの壁となります。
持ち込むキーボードは何が良い?オススメの小物楽器は?といった事を第三回でお話したいと思います。
大まかにですが、児童館での活動の説明でした。
次回は、親子リトミックを行うにあたって意識しておくべき部分をお話したいと思います。
[cc id=3452]
児童館で親子リトミックをするための、三つのポイント part0
現在、自分のリトミック仕事には三種類あり、一つは保育園、一つはサークル。そしてもう一つは児童館での親子リトミックです。
児童館でのリトミックは、各館で親子向けプログラムとして行われている事が多く、地域の親子へ営利ではなく開かれたものなので、最も気軽に利用されているものだと思います。
そうした児童館での親子リトミックに携わってきて気がつけば5年目に突入しておりました。というのも、部屋掃除をしていたら、児童館での活動を始めた頃の指導案が大量に出てきたからであり、思わず指折りしつつ「もう5年目か…」と感慨深く低く呻いたりして気づかされたのでした。
そんな昔の指導案を眺めていると、試行錯誤していた様子が蘇ってきます。
「なぜ、上手くいかない…!?」
当時は、約束された環境でヌクヌクとやっていたリトミックの派遣講師を辞め、取得した資格を誇りに外へ飛び出し始めた頃でした。正直、余裕だと思っていました。
そんな自信満々な鼻は、速攻で「失敗」という自意識過剰さんにとって最も強烈な棒でバッキバキに折られるのですが、現在は鼻も、やや曲がっているが(恐らく噛み合わせの問題だろう、左でばかり噛む癖がある)健康に戻り、当時よりは活動を上手く進められていると思います。
上手く進められる理由には、やはり失敗を経て改善を続けてきた部分が大きいと感じています。
「これイマイチだったな…」→「…もしかしてこうすれば良い!?」→「なるほどこうか!」
こうしたプロセス積み重なることで、活動の流れに見通しがつくようになり、内容も含め全体を組み立てる事が容易になっていきます。
「もう5年目か…」には、「年取ったな…」といった意味合いが9割含まれているのですが、それはさておき、 せっかく気持ちが振り返った所なので、児童館での親子リトミックをするにあたってのポイントも振り返ってみたいと思います。今後、同じような活動をされる方のお役に少しでも立てれば幸いです。
ポイントとして全部で三つに分けます。
•児童館での活動の全体像
•親子へのアプローチ方法、児童館と教室との違い
•使用楽器、機材
これらについて全三回で綴っていくつもりです。
つづく
子どもへの指導を確実にする唯一の要素「障がいのある子との遊びサポートブック」
子どもを「指導」する、という事が果たしてどれだけ出来ているだろう?
子どもにとって「教えられる」、という事は少なくとも子どもからすれば100%の「本意」ではない。例えば、つまらない講義を受けていたとしても大人は必要な事を取捨選択していけるだろう。だが、子どもにはその力はない。
とはいえ、子どもにも取捨選択する「権利」は当然ある。では、子どもが「教えられている」時、取捨選択の「捨」をどのように実行するだろうか?教える側の大人が「静かにして!」「ちゃんと聞きなさーい」と怒鳴っている姿を想像すれば目に浮かぶはず。
しかし、子どもだって自ら「取」を選ぶ事が出来る。遊びに夢中になっている姿こそが、それである。どこにそんな集中があるのだろうか?
障がいのある子との遊びサポートブック―達人の技から学ぶ楽しいコミュニケーション | ||||
|
「障がいのある子との遊びサポートブック」
藤野博:編著 奥田健次 藤本禮子 太田一貴 林琦慧:著 学苑社
子どもを「教える」、つまり指導する際に必要な要素に「遊び」と「模倣」が必要だと本書では繰り返し述べられている。
「子どもは自分よりも先に行っている人を見習い、真似る。そしてそこから学ぶ」
「あんなふうにやってみたい、といった気持ちが真似る原動力になる」
子どもが魅力的な遊びに夢中になり、その内容が実は的確な指導になっている。指導だが子どもは気がつかず楽しんでいる、という状況こそ子どもが真に学んでいる姿であり理想的である。
本書は発達にデコボコが見られる子どもに対して、どのように遊びを提供するか?といった内容だが、指導者側が「遊ばせる」ために必要な技術について、現場で実践にあたっている方の、まさにプロフェッショナルな技が網羅されており、それらは子どもを教える全ての人に必要な技術だといえる。
可愛らしい壁面装飾の作り方や賑やかな遊び歌の振り付け、といったような上辺の技術ではなく、「子どもが力を得るための方法」として根本の、原則的な技術がここにはある。
専門を教えようとするものの、そもそも子どもとどうやって関わればいいか分からない。そんな方にオススメの本です。
【レビュー】子どもが理解を示すための原則「子供を動かす法則」
指導において必要なものは何だろうか?
ある物事を教えるのに必要なのは、言うまでもなくその「教える内容」について。例えば算数を教えるなら算数について理解していなければ教えられない、という事である。それなので、専門職・専門士、所謂「先生」になるには、その教える専門分野についてを身につけなければならない(そして時には資格も…)。
ところで、修行ともいえる期間を過ごし、晴れて「先生」となった人は間もなく現場に出て活躍出来るのだろうか?知識も技術も認められて世に出たのであれば当然だろう。