
子どもを「指導」する、という事が果たしてどれだけ出来ているだろう?
子どもにとって「教えられる」、という事は少なくとも子どもからすれば100%の「本意」ではない。例えば、つまらない講義を受けていたとしても大人は必要な事を取捨選択していけるだろう。だが、子どもにはその力はない。
とはいえ、子どもにも取捨選択する「権利」は当然ある。では、子どもが「教えられている」時、取捨選択の「捨」をどのように実行するだろうか?教える側の大人が「静かにして!」「ちゃんと聞きなさーい」と怒鳴っている姿を想像すれば目に浮かぶはず。
しかし、子どもだって自ら「取」を選ぶ事が出来る。遊びに夢中になっている姿こそが、それである。どこにそんな集中があるのだろうか?
障がいのある子との遊びサポートブック―達人の技から学ぶ楽しいコミュニケーション | ||||
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「障がいのある子との遊びサポートブック」
藤野博:編著 奥田健次 藤本禮子 太田一貴 林琦慧:著 学苑社
子どもを「教える」、つまり指導する際に必要な要素に「遊び」と「模倣」が必要だと本書では繰り返し述べられている。
「子どもは自分よりも先に行っている人を見習い、真似る。そしてそこから学ぶ」
「あんなふうにやってみたい、といった気持ちが真似る原動力になる」
子どもが魅力的な遊びに夢中になり、その内容が実は的確な指導になっている。指導だが子どもは気がつかず楽しんでいる、という状況こそ子どもが真に学んでいる姿であり理想的である。
本書は発達にデコボコが見られる子どもに対して、どのように遊びを提供するか?といった内容だが、指導者側が「遊ばせる」ために必要な技術について、現場で実践にあたっている方の、まさにプロフェッショナルな技が網羅されており、それらは子どもを教える全ての人に必要な技術だといえる。
可愛らしい壁面装飾の作り方や賑やかな遊び歌の振り付け、といったような上辺の技術ではなく、「子どもが力を得るための方法」として根本の、原則的な技術がここにはある。
専門を教えようとするものの、そもそも子どもとどうやって関わればいいか分からない。そんな方にオススメの本です。