模倣させることで「最初の一歩」を示していく!
子どもは言葉よりも「見る」方が理解しやすいです。
模倣することが、自発性の「キッカケ」になる
リトミック活動では、色々な動きをします。
そしてその中では自由に表現してみる場面や、一定の動きに挑戦してみたりする場面があります。
しかしどちらにせよ、「こういう風にしてみると、もっと良い!」ということを子ども達に伝える必要が出てきたりします。
説明をするというのはなかなか難しいことです。
そういった時は、言葉ではなく具体的な何かを「見せる」方が一発で伝わったりします。
つまり、見せたものを子ども達は「模倣」することになります。
この「模倣」は活動自体をし始めた最初期や、慣れた状態でも「初めて行う活動」の際に必要になります。
何かを始める際は最初が肝心です。
「模倣」してみて、だんだん自分のものにしていき「もっとこうやってみよう!」といった自発性にも繋がってきます。
つまり、
模倣は真似をさせることではない
動きの模倣をさせるということは、一挙手一投足同じことをやらせる、つまり真似をさせることではありません。
全員が同じ動きを目指す(例えばダンスの振り付けとか)のであれば話は別ですが、リトミックでは「やろうとしている姿」を評価していった方が子ども達の意欲が良い方向に変わっていきます。
第一歩を示すことがキッカケ作りになる
とはいえ、「やろうとしている姿」とは、どこまで模倣させていくことなのか?といった判断が必要になります。
リトミックにおいては、音楽に動きを合わせていこうとする過程が大切です。
そこに向かう第一歩として、「最初の動き」だけ真似をさせてみましょう。
例えば特定の動きを音楽に合わせる活動だとします。
最初は音楽無しで、こちらが動いて見せます。「みんなもやってみましょう」と誘い、全員でやってみます。この段階は「真似をさせている」ことになります。
その後、「音楽と一緒にやってみましょう」とこちらは演奏側にまわります。
そうすると、子どもからすると真似をする対象がなくなります。
そうすると、子ども自身が思ったことを動いてみる段階になります。音楽が始まれば、後は動いていくしかありません。
このように、最初だけきっちり模倣させることでキッカケとなり、その後の活動に弾みをつけていくことができます。
大げさに示す
こちらが動きを示す場合、思っている以上に大げさに動いてみて丁度よいです。
とはいえ、大げさ過ぎるとコミカルなものと捉えられてしまい提示にはなりません。
大人がやってみせる、ということは慣れていないとどうしても羞恥心を感じてしまい、動作がコンパクトになってしまいがちです。
それなので、自分が思っているよりも3割ほど大きい動きをして示しましょう。
腕を振るのであれば3割大ぶりに、動きを止めるのであれば止める直前に3割大げさに止めてみせたりします。
端的に示す
こちらが示す場合、端的に示すことが大切です。
見せすぎたり、説明が長すぎたりすればするほど、子ども達は混乱していき飽きてしまいます。
提示は長くても10秒以内に、と意識しておくとテンポよく進められ、かつ子どもの集中も下がりにくいです。
そのために、あらかじめ伝えたいことを2〜3点にまとめておくとよいです。
言って聞かせて、やってみせて、やらせてみせて、褒める
ただ模倣させればよいわけではありません。
子ども達が自発的に「やってみよう!」となるには段階を踏まなければなりません。
まず最初に「こういうことをします」と口頭で伝えます。
この段階で子ども達は理解することは難しいです。しかし、興味や集中をひくという導入になります。
次に、実際にこちらが動いて見せます。
見ることで、「さっき言っていたことはこれか」と理解が進みます。
もちろん、こちらの動き方は上記のように大げさに見せます。
頭でわかっているだけでは理解できた事になりません。
実際にやってみる必要があります。こちら側は完璧を求めず、とりあえずやってみましょう。
そして大切なのは、やってみた事に対して「褒める」ことです。
この段階を経て、子どもは「こうすればいいんだ!」「もっとやってみたい!」と意欲的になってきます。
子どもを注目させてモデル示しとする方法
動きを示す、モデルの提示は何も大人だけではありません。子どもの姿も有効です。
前回「褒める」という部分がありましたが、この段階で子どもに注目させていくことが全体に良い影響を広げることができます。
例えば、上手だったり個性的な動きをしている子がいたら、一旦活動を止めて、「みんな◯◯くん(ちゃん)をみてごらん、すごい素敵な動き方をしているよ」と全体に声をかけてみましょう。
そうすると、「褒められた」と感じた子はより意識して動き、それが周りへのモデルとなって模倣の対象になります。
そこから、さらに別の子へ「褒める」ことを広げていければ活動は弾んでいきます。
また、興奮しすぎて「ふざけ」の状態にある子へも、こうした子どものモデルは有効です。
「◯◯くん(ちゃん)をみてごらん」と伝える事で自分の行っていることを振り返らせることになります。
「ふざけ」の子を名指しで「こうしなさい」と伝えて雰囲気を緊迫させるよりも、この方が穏やかな場が保たれます。
何より、言われた子からしても嫌な気分にはなりにくいはずです。
モデル示しは、どんな子も輝かせられる
リトミックでは、「こうしなければいけない」といった要素が少なく、それぞれの表現を認めていける機会でもあります。
例えば、普段控えめな子でも、こちらがその子のいい部分を拾って「モデル」として注目させることで、自信を持てるように繋げていくことができます。
褒められていい気分になるのは誰だって同じです。「(ぼくも、わたしも)見て見て!」と活動が活発になっていくことでしょう。
そして「ふざけ」が多かったりする子は、実はアイデアの宝庫だったりします。
全体の動きが画一的になってきたら、こういった子の動きがとても斬新で面白かったりします。
そういった時に「モデル」になってもらうことで、全体がリフレッシュして活動が生き生きしてきたりします。
次回は、「見せるテクニック」についてお伝えします。
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